沖本先生留学記 15
2020年04月07日
近況報告15
2020年4月6日
オハイオ州立大学
沖本 民生
昨年秋に立てた計画では、今頃は日本に一時帰国し、娘の卒園式に出席し、花見に行き、入学式に出席し、娘のバスケ、息子の野球の練習に参加し、夫婦の誕生日を祝い、遅めの冬休みを楽しく過ごす予定でした。しかし、現実はそれとはかけ離れており、一時帰国はかなわず、stay at home orderの下、一週間に一度程度の買い物の他は家から出ることなく生活しています。大学から毎日届くオハイオ州のコロナウイルス感染状況を伝えるemailを見ると、ニューヨークほどではないにしろ、確実に感染者が増えていることが分かります。そこで、今回は日常生活におけるコロナウイルスの影響を書きたいと思います。
まず、私の仕事に関してですが、ラボに行くことができなくなりました。そのため、最近は専らデータ整理と論文の読み書きをしています。Stay at home orderが終わった時に、いつになるか分かりませんが、いいスタートを切れるよう準備を進めています。ラボミーティングは全てZoomを用いたウェブミーティングに切り替わりました。研究は進まなくなってしまったので、内容もジャーナルクラブに変わりました。また、研究自体への影響として、これまで毎日続けてきた発がんマウスの治療ができなくなりました。このマウスは治療しなくても8-9か月生きるマウスで、治療によって生存が伸びることを確認したかったのですが、治療を開始して7か月のところで治療を断念することになってしまいました。残念ですが仕方がありません。
普段の生活の面では、一時期どのスーパーに行っても食材が買えないという状況がありましたが、今はだいぶ元通りになりました。感染のリスクを減らすためにも今は週一回まとめ買いをしています。アジア人差別が起きていると聞いていますが、幸い私自身は今のところ経験していません。
大学の講義は全てWebExを用いたオンライン講義に変わりました。また、寮に入っていた学生たちは実家に帰るかキャンパス外のアパートに引っ越すよう促されていました。患者が増えればそこに入ってもらう計画のようです。
ニューヨークでは医学生が卒業を早めて仕事を始めたそうです。リタイアした医療従事者に戻ってもらうような話もあります。ある友人(ポスドク、呼吸器専門医)はこれをチャンスととらえ、アメリカの医師免許をくれるなら病院で働いてやるぞと交渉しています。私も一緒に働きたいか聞かれましたが、やんわり断りました。これが医師として正しい判断なのかは分かりません。しかし、家族も心配していること、医師の感染するリスク、発症時の治療費、またトリアージの結果私が治療してもらえるか分からない、そういったことからイエスとは言えませんでした。また、日本で臨床に戻ることも考えましたが、申し訳ありませんが、アメリカでの研究生活を続けたいというのが今の気持ちです。
日本でまだCOVID-19患者が見つかっていないのは山陰両県とわずかだと思います。ネットでは山陰最強説、山陰不要説、日本一の過疎決定戦などいろいろ表現されていますが、これは神の御加護だと思います。次回、動物舎でエチオピア人キリスト教徒の獣医に無事再会した際には、この説について話してみたいと思います。
皆様、どうぞご自愛ください。