近況報告21

2021年3月19日

オハイオ州立大学

沖本 民生

 

 3月も半ばとなり日本では桜が開花し始めていることと思います。皆様いかがお過ごしでしょうか。最近若干忙しかったこともあり、近況報告をさぼっておりました。申し訳ありません。そんな中でも日課の読書は続けております。以前友人に薦められた映画化もされた少女マンガを読むのが毎日の楽しみです。前世でどれだけ徳を積めばこんな風になれるんだ?とやっかむこともありますが、高校生の淡い恋心、片思いを見ると、おっさんのくせに胸がキュンキュンし、憧れてしまいます。

 さて、日本でもコロナウイルスのワクチン接種が始まったようですが、私も1月26日に1回目、2月23日に2回目の接種を受けました。会場は大学キャンパス内にある18000人を収容できる大きなアリーナです。受付ではcongratulations!とハイテンションで迎えられ、一連の説明を受けた後に接種を受けました。接種時にもらえるステッカーには“COVID-19 warrior in training”と書かれており、こういう遊び心にも文化の違いを感じました。接種は非常にスムーズで15分間の経過観察の時間を含めても会場到着から1時間以内には終わったと思います。夜から37度台後半の発熱、穿刺部痛がありました。翌日も思っていた以上にしんどく、初回は何ともないだろうと高をくくっていたのを反省しました。

 2回目の接種も同じ会場で行われました。この時はワクチンの説明者が“トランスレーターを呼ぼうか?”と提案してくれたのですが、無駄なプライドで不要だと断りました。しかし、その後の質問で“皮膚が薄く(thinner)なる薬は飲んでないか?”と聞かれたときにthinnerをdinnerと勘違いして意味が分からず聞き直してしまった時にはばつが悪かったです。それ以外は非常にスムーズで、30分程度で会場を出られたと思います。

 初回で予想以上の副反応が出たので、2回目はもっとひどいだろうと思い、その日は実験を早めに切り上げて帰宅しました。実際、接種から2時間後くらいから穿刺部の痛みが始まり、夕方ころには痛みで腕をあげられなくなりました。夜12時ころ、そろそろ寝ようかなというころ、突然寒気が始まりました。数分後には震えが始まりました。毛布にくるまっても寒気が収まらず、震えも強くなりました。震えは痙攣をおこしたかと思うほど強くなり、手足を伸ばすことができなくなりました。あまりのしんどさに解熱剤を飲もうとベッドを出ましたがまっすぐ歩けません。何とか薬置き場まで行き、薬を水で飲もうとしましたが、ペットボトルがなかなか開けられません。何とか開けたと思ったら震えのあまり水がボトルから吹き出してしまいました。予想を超える副反応に不安が強くなります。「本当に痙攣が起きたら死ぬんじゃないか?」「いやいや、何万人、何十万人に打って痙攣で死亡したなんて聞いてない。絶対大丈夫だ。それなら高齢者が亡くなってるはずだ」「でも高齢者ならこんな強い免疫反応は起きないから亡くなっていないだけかもしれない」などという無駄な思考が駆け巡りました。結局震えは30分程度で収まり、その後は寝ることができました。

 翌朝、38.5度程度の発熱があり、不安を胸に抱えた状態で妻に電話しました。妻は明らかに眠そうで「なんか用事あった?」と聞いてきます。そう言われると、「いや、ない。おやすみ」というのがやっとでした。その日は日中に3度解熱剤を飲みましたが、夜には穿刺部の痛み以外はほぼ元通りになりました。翌日、妻に再度電話し、どんなに大変で不安だったか話しました。しかし、妻からいたわりの言葉は一切なく、自分が接種するときの不安ばかりです。そこで気が付きました。少女マンガに出てくる片思いは美しくて憧れの対象だったけど、自分は愛されたいのだと。ただ、愛を感じられなかったのは私の現世での徳が足りないだけかもしれない、とも。

 これから接種を受ける人の不安をあおる気はありません。私の副反応は周りの人よりも強かった感じはありますし、すでに日本で2回接種を終えた人たちの状況を見てもそこまで大きな副反応は多くなさそうです。可能であれば休前日の接種や部署内で接種日を分けるなどの対応が望ましいのでしょうが、そういった調整できないこともあると思います。そういう場合には、接種翌日の検査数を制限しておくなどの対応はしておいても悪くないかもしれません。

 皆様が何事もなくワクチン接種を受けられ、兵隊を獲得できることを祈っています。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

20210319